名大ウォッチ

新聞社で長く科学報道に携わってきたジャーナリストが、学内を歩きながら、
大学の今を自由な立場で綴っていきます。

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 2017年1月から3年余りにわたって掲載してきたコラム「名大ウォッチ」を20年3月末で終えることになりました。これまでのご愛読に感謝します。
 「外部からの視点で自由に書く」というミッションのもと、興味の赴くままにキャンパスを歩き回ってきました。取り上げたかったテーマはまだまだあり、連載開始にあたって掲げた欲張りな抱負、「大学を丸ごと」には到底及びませんでしたが、あまり外からは見えない、実は学内でも案外知られていない、そんな名大のユニークな素顔の一端を多少なりとも紹介できたのではないかと思っています。

新型コロナウイルス対策でひっそりしたキャンパスを、菜の花が彩ってくれた

 名古屋大学での3年半は、大学という場について考える機会にもなりました。
 一言でいうなら、「時間と空間」です。
 「『勇気ある知識人』とは?」(2018年4月23日)で、名古屋大学憲章がうたう「論理的思考力と想像力に富んだ勇気ある知識人」の「想像力」に着目しました。私自身は想像力を「目に見えること、起きたことだけでなく、それらを手がかりに、見えないこと、これから起きるかもしれないことを『見る』力」であり、「時間空間を超えて、思考や思いを広げる力」と定義し、大学で身につけるべき重要な力だと考えています。
 この記事の中で東京大学の石井洋二郎・元教養学部長の発言を引用しましたが、石井さんの近著『危機に立つ東大』にこんな言葉がありました。
 「大学が果たすべき本来の使命はあくまでも、思考を熟成させる静謐なゆとりの時間と、自由に言葉の飛び交う白熱した空間を醸成し、可能な限り多くの人に提供することである。そうでなければ、大学が大学であることの意味がどこにあるだろうか?」
 まさにその通りだと思います。
 自由な時間と空間の中にあって、時間と空間を超えて思考を広げ、より良い明日のための知を生み出す、それが大学という場だと思います。社会の期待もそこにあります。実際に名大キャンパスで、私たちのかわりに想像を広げ、未来を見据えて日夜努力する多くの研究者に会ってきました。そういう大学を社会の側でも見守り、応援していくことが大切だと思っています。
 これからの名古屋大学に大いに期待しています。3年半、どうもありがとうございました。

旅立つ若者たちに心からのエールを!

著者

辻 篤子(つじ あつこ)

1976年東京大学教養学部教養学科科学史科学哲学分科卒業。79年朝日新聞社入社、科学部、アエラ発行室、アメリカ総局などで科学を中心とした報道に携わり、2004〜13年、論説委員として科学技術や医療分野の社説を担当。11〜12年には書評委員も務めた。2016年10月から名古屋大学国際機構特任教授。

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