名大ウォッチ

新聞社で長く科学報道に携わってきたジャーナリストが、学内を歩きながら、
大学の今を自由な立場で綴っていきます。

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カテゴリ:未知への挑戦 の記事一覧

 私たち人間の身体がさまざまな伝達物質によってうまく制御されているように、植物にも同様の仕組みがあるはず。それを解き明かそうというきわめて基礎的な研究から、植物の新品種の開発をめざすベンチャー企業が生まれた。宇宙の始まりのビッグバンに迫るなどの加速器実験に携わっていた物理学者は、そこから生まれた技術を他で生かそうと会社を興した。せっかくの新技術を企業が実用化しないなら、自分たちで引き受けようと起業した工学研究者もいる。大学の最先端の研究室から社会へ、その道はどのようにして切...

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 「ピラミッド研究最前線」と題した、高等研究院の河江肖剰准教授の講演が終わるのを待ちかねていたように、環境学研究科の渡邊誠一郎教授が口を開いた。「小惑星リュウグウではやぶさ2がやっている探査と全く同じですね」。渡邊さんは宇宙航空研究開発機構(J A X A)の小惑星探査機「はやぶさ2」の科学チームをまとめるプロジェクト・サイエンティストを務めている。河江さんはピラミッドをドローンでくまなく撮影し、そこから石の一つひとつまでを正確に記した3次元の実測図を作ったことを紹介したが、...

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2019年06月06日

「はやぶさ2」と大学

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」が6月末にも、小惑星リュウグウへの2度めのタッチダウンに挑戦する。リュウグウは直径1kmほどの小さな天体で、現在は地球から約2.7億km、電波が往復するのに約30分もかかる遠方にある。はやぶさ2は1mそこそこの本体に太陽電池パネルを広げ、約3年半の旅を経て2018年6月末にリュウグウに到達した。その小さな身体が背負うのは、私たちのルーツを太陽系の起源にさかのぼって解き明かそうという科学者たちの大きな夢だ。ハラハラド...

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2019年04月18日

数学を支える人々

 大学での研究や教育は、さまざまな役割を担う人たちによって支えられていることはいうまでもない。あらゆる学問分野に共通の部分があれば、その分野に特徴的な部分もある。数学にかかわる人たちがちょうどこの春、それぞれに節目を迎えたのを契機に訪ねると、そのユニークな活動を通じて、ちょっと近寄りがたい感じもある数学のいろいろな顔が見えてきた。  まず、数学博物館を作ろうという試みを中心になって進めてきた名古屋大学多元数理科学研究科の伊藤由佳理・元准教授だ。過去形で語らなければならないのは...

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 エレクトロニクスで世界を変える。名古屋大学未来材料・システム研究所の天野浩教授が掲げるこの目標に向けて、世界でも例のない大規模な実験施設が名大東山キャンパスの一角に完成した。天野さんが赤﨑勇・特別教授とともに開発した青色発光ダイオード(LED)は世界の照明に革命をもたらし、ノーベル賞を受賞したが、その材料である窒化ガリウム(GaN)にはさらに大きな可能性がある。誰もが快適で安全に暮らせる「超スマート社会」実現に欠かせない、高性能で消費電力の少ない次世代半導体材料の有力候補な...

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著者

辻 篤子(つじ あつこ)

1976年東京大学教養学部教養学科科学史科学哲学分科卒業。79年朝日新聞社入社、科学部、アエラ発行室、アメリカ総局などで科学を中心とした報道に携わり、2004〜13年、論説委員として科学技術や医療分野の社説を担当。11〜12年には書評委員も務めた。2016年10月から名古屋大学国際機構特任教授。

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