名大ウォッチ

新聞社で長く科学報道に携わってきたジャーナリストが、学内を歩きながら、
大学の今を自由な立場で綴っていきます。

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 博士といえば研究者、というイメージを抱く。だが、博士には研究をするだけではない、さまざまな役割がある。名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)を訪ね歩きながら、改めて感じたことだ。ITbMは分子をキーワードに異分野を融合させた研究を進め、大きな成果をあげていることを先に紹介した。そのユニークな研究活動は、直接研究をするわけではない博士たちの活躍あってこそ、であり、その意味で彼らは研究者と対等のパートナーなのである。  昨今盛んに報道されるように、博士を取り...

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 名古屋大学の人材育成の目標は「勇気ある知識人」である。この春の卒業式と入学式でも、松尾清一総長が祝辞の中でこの言葉を取り上げ、学生たちを激励した。「自由闊達」とともにさまざまな場面で語られるのを耳にする。名古屋大学を特徴付ける言葉と言っていい。「勇気ある知識人」とはいったい何か、そして、どのようにして登場したのだろうか。  私が最初にこの言葉を知ったのは2016年2月、東日本大震災から5年になるのを機にした取材で減災連携研究センターの鈴木康弘教授を訪ねたと...

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 3月末で定年退職した未来材料・システム研究所の楠美智子教授は、名古屋大学の工学系で唯一の女性教授だった。大学時代の恩師に「あなたはがむしゃらさが足りない」と言われたこともあり、「はっきりした意思を持って続けてきたというより、この分野が好きでなんとなく続けてきたという感じが強い」と振り返る。子育てのために2度、研究を離れた。しかし、その都度、請われて研究現場に戻ってきた。カーボンナノチューブやグラフェンなど炭素でできた新素材の研究で実績を重ね、民間の研究所から名古屋大学に転じ...

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 名古屋大学でトランスフォーマティブといえば、世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)のトランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)が頭に浮かぶだろう。そこにもう一つの「トランスフォーマティブ」が名乗りをあげた。青色発光ダイオード(LED)で2014年のノーベル物理学賞を受賞した、名古屋大学未来材料・システム研究所の天野浩教授が掲げる「トランスフォーマティブエレクトロニクス」である。「トランスフォーマティブ」は、「世界を変える」といった意味で、ITbMは「分子で世界を...

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 「異分野融合」が言われるが、現実にはそう簡単なことではない。専門の違う研究者を一箇所に集めれば進むというわけでは決してない。名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)は、その異分野融合の稀有な成功例ではないだろうか。文部科学省の世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の一つで、現在ある9拠点の中では先発組から5年遅れの2013年にスタートした。予算規模も半分の末っ子だったが、すでにいくつもの大きな研究成果をあげ、トップレベルの高評価を受けている。春からは...

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著者

辻 篤子(つじ あつこ)

1976年東京大学教養学部教養学科科学史科学哲学分科卒業。79年朝日新聞社入社、科学部、アエラ発行室、アメリカ総局などで科学を中心とした報道に携わり、2004〜13年、論説委員として科学技術や医療分野の社説を担当。11〜12年には書評委員も務めた。2016年10月から名古屋大学国際機構特任教授。

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