名大ウォッチ

新聞社で長く科学報道に携わってきたジャーナリストが、学内を歩きながら、
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カテゴリ:災害に挑む の記事一覧

 伊勢湾台風から60年を迎える一方、台風15号、19号といった大型台風による被害が相次いだ2019年が終わり、新しい年になってまもなくの1月17 日は阪神・淡路大震災25年だった。節目の年とあって、新聞やテレビなどでさまざまな特集が組まれた。その1週間後、政府の地震調査研究推進本部は南海トラフ地震によって3m以上の津波が静岡県伊豆地方から九州東部にかけて26%以上の高い確率で押し寄せるとの評価結果を発表した。スーパー伊勢湾台風のような強大な台風襲来の可能性も言われ、大災害のリ...

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 5000人を超える犠牲者を出した1959年の伊勢湾台風はいうまでもなく、日本の災害史に残る巨大災害であり、2年後の災害対策基本法の制定につながり、名古屋大学工学部に土木工学科と建築学科ができるきっかけともなった。それからちょうど60年になる2019年、名大の減災連携研究センターを中心に、特別企画展やシンポジウム、ゆかりの地を訪ねる巡検ツアーなどさまざまな記念事業が行われた。この大災害の多様な側面が浮かび上がり、さらに強大な「スーパー伊勢湾台風」の来襲もいわれるなか、決して過...

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2018年11月22日

台風の目に飛び込む

 日本列島に大きな爪痕を残して、今年の台風シーズンがやっと終わった。台風をめぐる多くのニュースの中で目に止まったのが、名古屋大学のチームが航空機で台風の目に飛び込んで観測したというニュースだった。航空機による台風観測はかつて、米軍によって行われていたが、1987年に終了した。1977年には気象衛星ひまわりが打ち上げられており、米軍機による観測が終わるまでの10年間、航空機による観測と衛星による宇宙からの観測の両方が行われていた。つまり、台風観測史上、最も手厚い態勢が敷かれてい...

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2018年06月29日

火山と生きる

 眼前に現れたのは、上高地の大正池を思わせる不思議な光景だった。立ち枯れた木々が水中から立ち上がり、細く尖った先端が青空に向かって伸びている。ここがどこかといえば、木曽御嶽山(標高3067メートル)の山麓である。1984年の長野県西部地震で「御嶽崩れ」と呼ばれる大規模な岩屑(がんせつ)なだれが起き、流れ落ちた大量の土砂が王滝川をせき止めて湖ができたという。思い起こせば、地震によって引き起こされた、まれに見る大規模な火山の崩壊だった。崩れ落ちた土砂は温泉旅館をのみこんだ。その崩...

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 思わず、聞き返した。「えっ、月命日ごとに法要、ですか?」  東日本大震災からちょうど6年に当たる3月11日の土曜日午後、名大東山キャンパスにある減災館でのギャラリートークでのことだ。この日のテーマは「愛知の歴史が語る人と震災」、講師は関東大震災など歴史的な地震の研究でも知られる地震学者の武村雅之教授だった。    どの地震の法要かといえば、今から120年以上も前、1891(明治24)年10月28日に起きた濃尾地震だ。地震の規模はマグニチュード8.0、内陸の地...

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著者

辻 篤子(つじ あつこ)

1976年東京大学教養学部教養学科科学史科学哲学分科卒業。79年朝日新聞社入社、科学部、アエラ発行室、アメリカ総局などで科学を中心とした報道に携わり、2004〜13年、論説委員として科学技術や医療分野の社説を担当。11〜12年には書評委員も務めた。2016年10月から名古屋大学国際機構特任教授。

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