名大ウォッチ

新聞社で長く科学報道に携わってきたジャーナリストが、学内を歩きながら、
大学の今を自由な立場で綴っていきます。

RSSを購読する

2017年04月18日

小さなカフェから

 3月末、名古屋大学では卒業式を迎え、晴れがましい笑顔があふれたが、あるカップルにとっては喜びもひとしおの一週間だったに違いない。月曜日、彼が工学博士の学位を得たのに続き、木曜日には2人の婚姻届が受理されたとの知らせが届いたからだ。彼が博士課程に進んで5年余り、そして、婚姻届を出してからなんと3年もの時間がたっていた。 時間がかかったのにはわけがある。彼はイラクからの留学生で、イラク人との国際結婚をどう扱うのか、前例がないために役所も試行錯誤、手探りで書類を整えざるを得なかっ...

[続きを読む]

 3月半ばに東京・上野の日本学士院で「ニホニウム命名記念式典」があり、理化学研究所が世界で初めて合成した原子番号113の新元素を「ニホニウム」と命名することが公式に宣言された。メンデレーエフが1869年に発表して以来、欧米勢が埋めてきた周期表に、初めてアジア生まれの元素が載ることになる。歴史的といっていい出来事である。その記念式典に参列して、さまざまなことを考えさせられた。 まず思ったのは、もし合成がもう少し早ければ、日本人によってニホニウムの命名が宣言されたはず、ということ...

[続きを読む]

 思わず、聞き返した。「えっ、月命日ごとに法要、ですか?」  東日本大震災からちょうど6年に当たる3月11日の土曜日午後、名大東山キャンパスにある減災館でのギャラリートークでのことだ。この日のテーマは「愛知の歴史が語る人と震災」、講師は関東大震災など歴史的な地震の研究でも知られる地震学者の武村雅之教授だった。    どの地震の法要かといえば、今から120年以上も前、1891(明治21)年10月28日に起きた濃尾地震だ。地震の規模はマグニチュード8.0、内陸の地...

[続きを読む]

2017年03月10日

トランプ旋風と大学

 やはり、百聞は一見に如かず。温暖化を認めないなど科学に否定的な姿勢が伝えられているトランプ政権だが、米国の科学者たちの危機感がどれほどか、2月半ばにボストンで開かれた米科学振興協会(AAAS)の年次大会に参加し、ひしひしと感じることになった。急遽設定された緊急シンポジウムのテーマはずばり、「トランプ時代に科学とその健全性を守る」。会場は立ち見が出て、それでも入りきれない人たちが廊下にあふれた。翌日には、科学者たちが大会会場近くの広場で「科学のために立ち上がろう」「科学を守れ...

[続きを読む]

 NHKの朝のニュースで1月31日、「日本の憲法を開発途上国へ」のタイトルで名古屋大学の法整備支援が取り上げられていた。全国ニュースで5分余り放映されたとあってその威力はさすがに大きく、東京の友人たちから早速、いくつか反響が届いた。その一つにはこうあった。「日本の国際貢献の一つとして実に有意義な取り組みだと改めて認識しました。アメリカは評判を落としまくり、こわもてな大国が幅を利かせる中、日本にはこうしたソフトな貢献がふさわしいのだと心底思います」。名大の法整備支援について私が...

[続きを読む]

著者

辻 篤子(つじ あつこ)

1976年東京大学教養学部教養学科科学史科学哲学分科卒業。79年朝日新聞社入社、科学部、アエラ発行室、アメリカ総局などで科学を中心とした報道に携わり、2004〜13年、論説委員として科学技術や医療分野の社説を担当。11〜12年には書評委員も務めた。2016年10月から名古屋大学国際機構特任教授。

過去の記事一覧

カテゴリ

» 掲載記事に関する免責事項

» トップページに戻る