名大ウォッチ

新聞社で長く科学報道に携わってきたジャーナリストが、学内を歩きながら、
大学の今を自由な立場で綴っていきます。

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2018年06月29日

火山と生きる

 眼前に現れたのは、上高地の大正池を思わせる不思議な光景だった。立ち枯れた木々が水中から立ち上がり、細く尖った先端が青空に向かって伸びている。ここがどこかといえば、木曽御嶽山(標高3067メートル)の山麓である。1984年の長野県西部地震で「御嶽崩れ」と呼ばれる大規模な岩屑(がんせつ)なだれが起き、流れ落ちた大量の土砂が王滝川をせき止めて湖ができたという。思い起こせば、地震によって引き起こされた、まれに見る大規模な火山の崩壊だった。崩れ落ちた土砂は温泉旅館をのみこんだ。その崩...

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 名古屋大学東山キャンパスの南端、山手グリーンロード沿いに、木立に囲まれて大学らしからぬたたずまいを見せているのが名古屋大学ジェンダー・リサーチ・ライブラリである。昨年11月に開館した。その名の通り、ジェンダー関係の書物を集め、研究や交流の拠点となることをめざしている。目玉の一つは、女性史研究のパイオニアである水田珠枝・名古屋経済大学名誉教授の蔵書約7000冊を収める「水田珠枝文庫」である。多くの人に利用してもらいたいとの思いから寄贈されたものだが、他ならぬ水田さん自身がこの...

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 タイトルはパリコレならぬ「カニコレ'18」、副題は「カニのハサミは使いよう」とあって、中に入れば入館者がお気に入りのカニを選ぶ「カニ選挙」もある。名古屋大学博物館で開催中の特別展は遊び心満載だ。その中身はといえば、カニのハサミの形と機能の多様性、そして同時にそこに潜む普遍性を明らかにする先端研究の成果だ。 博物館と聞くと、化石や動植物などの標本が並ぶ静かな空間が思い浮かぶ。博物館行きといえば、骨董品扱いと同義で古さの代名詞のようなものだ。だが、名大博物館の内側に入り込んで見...

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 博士といえば研究者、というイメージを抱く。だが、博士には研究をするだけではない、さまざまな役割がある。名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)を訪ね歩きながら、改めて感じたことだ。ITbMは分子をキーワードに異分野を融合させた研究を進め、大きな成果をあげていることを先に紹介した。そのユニークな研究活動は、直接研究をするわけではない博士たちの活躍あってこそ、であり、その意味で彼らは研究者と対等のパートナーなのである。  昨今盛んに報道されるように、博士を取り...

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 名古屋大学の人材育成の目標は「勇気ある知識人」である。この春の卒業式と入学式でも、松尾清一総長が祝辞の中でこの言葉を取り上げ、学生たちを激励した。「自由闊達」とともにさまざまな場面で語られるのを耳にする。名古屋大学を特徴付ける言葉と言っていい。「勇気ある知識人」とはいったい何か、そして、どのようにして登場したのだろうか。  私が最初にこの言葉を知ったのは2016年2月、東日本大震災から5年になるのを機にした取材で減災連携研究センターの鈴木康弘教授を訪ねたと...

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著者

辻 篤子(つじ あつこ)

1976年東京大学教養学部教養学科科学史科学哲学分科卒業。79年朝日新聞社入社、科学部、アエラ発行室、アメリカ総局などで科学を中心とした報道に携わり、2004〜13年、論説委員として科学技術や医療分野の社説を担当。11〜12年には書評委員も務めた。2016年10月から名古屋大学国際機構特任教授。

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