名大ウォッチ

新聞社で長く科学報道に携わってきたジャーナリストが、学内を歩きながら、
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 3月末で定年退職した未来材料・システム研究所の楠美智子教授は、名古屋大学の工学系で唯一の女性教授だった。大学時代の恩師に「あなたはがむしゃらさが足りない」と言われたこともあり、「はっきりした意思を持って続けてきたというより、この分野が好きでなんとなく続けてきたという感じが強い」と振り返る。子育てのために2度、研究を離れた。しかし、その都度、請われて研究現場に戻ってきた。カーボンナノチューブやグラフェンなど炭素でできた新素材の研究で実績を重ね、民間の研究所から名古屋大学に転じ...

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 名古屋大学でトランスフォーマティブといえば、世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)のトランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)が頭に浮かぶだろう。そこにもう一つの「トランスフォーマティブ」が名乗りをあげた。青色発光ダイオード(LED)で2014年のノーベル物理学賞を受賞した、名古屋大学未来材料・システム研究所の天野浩教授が掲げる「トランスフォーマティブエレクトロニクス」である。「トランスフォーマティブ」は、「世界を変える」といった意味で、ITbMは「分子で世界を...

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 「異分野融合」が言われるが、現実にはそう簡単なことではない。専門の違う研究者を一箇所に集めれば進むというわけでは決してない。名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)は、その異分野融合の稀有な成功例ではないだろうか。文部科学省の世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の一つで、現在ある9拠点の中では先発組から5年遅れの2013年にスタートした。予算規模も半分の末っ子だったが、すでにいくつもの大きな研究成果をあげ、トップレベルの高評価を受けている。春からは...

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 昨年秋、重力波を初めて観測した米国の研究者たちがノーベル物理学賞を受賞したというニュースは国内でも大きな話題になった。その米国チームから功労者として讃えられたのが東大宇宙線研究所の川村静児教授だ。岐阜県の神岡鉱山の地下で建設中の大型低温重力波観測装置「KAGRA(かぐら)」の主要メンバーでもある。KAGRAは初観測では米国に先を越されたものの、来年には観測を始め、これから本格化する重力波天文学の第一線に躍り出ようとしている。 KAGRAでインタビューを受けていた姿の記憶も新...

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 ベトナムのハノイ法科大学でこの秋、日本語で日本法を学ぶ、名古屋大学日本法教育研究センターの10周年を祝う式典があった。希望者の多い人気コースだが、法学部の通常のカリキュラムと合わせて学ぶので学生にとっては負担も大きい。毎年200人以上の志願者の中から25人が選ばれ、卒業までこぎつけるのはそのうち10人前後と、入るのも出るのも狭き門である。これまでに71人が卒業し、22人が名大など日本の大学院に進んだほか、日本企業や大学、政府など様々な場所で日本とベトナムをつなぐ人材として活...

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著者

辻 篤子(つじ あつこ)

1976年東京大学教養学部教養学科科学史科学哲学分科卒業。79年朝日新聞社入社、科学部、アエラ発行室、アメリカ総局などで科学を中心とした報道に携わり、2004〜13年、論説委員として科学技術や医療分野の社説を担当。11〜12年には書評委員も務めた。2016年10月から名古屋大学国際機構特任教授。

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