名大ウォッチ

新聞社で長く科学報道に携わってきたジャーナリストが、学内を歩きながら、
大学の今を自由な立場で綴っていきます。

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2019年07月31日

歴史を学ぶ意味

 宇宙航空研究開発機構の小惑星探査機「はやぶさ2」が、小惑星リュウグウへの2度目の着陸に成功した。最初の着陸で岩石のサンプルが採取されたことが確実視されており、もし大きな失敗があって帰還できないようなことになれば、それも失うことになる。慎重論も出ていたなかでの見事な成功だ。「100点満点で言えば1000点」「太陽系の歴史のかけらを手に入れた」と記者会見での言葉もはずんだ。そんなはやぶさ2の活躍に胸を躍らせた人も多かったに違いない。 はやぶさ2の活躍に沸く様子を眺めながら、西洋...

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 3Dプリンターは、デジタルデータから立体物を作り出す。プリンターと呼ばれるのは、印刷した面を積み重ねるようにして立体にするからだ。印刷のためのいわばインクを金属にすれば、従来の機械加工ではできないような複雑な形の金属部品もできることから、ものづくりに変革をもたらすと期待され、開発競争も過熱している。 そんな画期的な技術を最初に考案したのは小玉秀男さん、名古屋大学の卒業生である。卒業から40年余り、この夏、生徒として再びキャンパスに戻ってくる。理学部の「3D工房」講座に参加し...

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2019年06月06日

「はやぶさ2」と大学

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」が6月末にも、小惑星リュウグウへの2度めのタッチダウンに挑戦する。リュウグウは直径1kmほどの小さな天体で、現在は地球から約2.7億km、電波が往復するのに約30分もかかる遠方にある。はやぶさ2は1mそこそこの本体に太陽電池パネルを広げ、約3年半の旅を経て2018年6月末にリュウグウに到達した。その小さな身体が背負うのは、私たちのルーツを太陽系の起源にさかのぼって解き明かそうという科学者たちの大きな夢だ。ハラハラド...

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 私たちは日々、さまざまな技術の恩恵を受けながら暮らしている。しかし、それらがいったいどのようにして誕生したのか、そこにどんな創意や努力があったのか、思いをはせることはほとんどない。そして時折、例えばノーベル賞が、そこにたぐいまれな発見があったことを教えてくれる。身近なところでは、スマホなどのタッチパネルは、2000年のノーベル化学賞を受賞した白川英樹博士らによる導電性高分子、つまり電気を通すプラスチックの開発が始まりだった。また、名古屋大学の赤﨑勇、天野浩・両特別教授による...

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2019年04月18日

数学を支える人々

 大学での研究や教育は、さまざまな役割を担う人たちによって支えられていることはいうまでもない。あらゆる学問分野に共通の部分があれば、その分野に特徴的な部分もある。数学にかかわる人たちがちょうどこの春、それぞれに節目を迎えたのを契機に訪ねると、そのユニークな活動を通じて、ちょっと近寄りがたい感じもある数学のいろいろな顔が見えてきた。  まず、数学博物館を作ろうという試みを中心になって進めてきた名古屋大学多元数理科学研究科の伊藤由佳理・元准教授だ。過去形で語らなければならないのは...

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著者

辻 篤子(つじ あつこ)

1976年東京大学教養学部教養学科科学史科学哲学分科卒業。79年朝日新聞社入社、科学部、アエラ発行室、アメリカ総局などで科学を中心とした報道に携わり、2004〜13年、論説委員として科学技術や医療分野の社説を担当。11〜12年には書評委員も務めた。2016年10月から名古屋大学国際機構特任教授。

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