名大ウォッチ

新聞社で長く科学報道に携わってきたジャーナリストが、学内を歩きながら、
大学の今を自由な立場で綴っていきます。

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カテゴリ:大学の在り方 の記事一覧

 「異分野融合」が言われるが、現実にはそう簡単なことではない。専門の違う研究者を一箇所に集めれば進むというわけでは決してない。名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)は、その異分野融合の稀有な成功例ではないだろうか。文部科学省の世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の一つで、現在ある9拠点の中では先発組から5年遅れの2013年にスタートした。予算規模も半分の末っ子だったが、すでにいくつもの大きな研究成果をあげ、トップレベルの高評価を受けている。春からは...

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 世界大学ランキングに注目が集まっている。この秋の発表では、国内トップの東大は前年の39位から46位へと順位を下げ、新聞各紙には「過去最低」という見出しが躍った。10年前は17位、アジアでは首位だったが、今回はシンガポールや中国、香港の5大学に続く6位にとどまった。次の京大は91位から順位を上げて74位、続く阪大、東北大は201-250位、東工大251-300位、名大301-350位という結果だった。ちなみに、名大も10年前は国内では今回同様6位、世界112位だった。日本の大...

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2017年08月21日

同窓生がつなぐもの

 マレーシアの首都クアラルンプールにあるマラヤ大学の講堂で7月31日、「ノーベル賞への道」と題した益川敏英特別教授の講演会が開かれた。これまでに20回以上も聞き役を務めてきたベテランの杉山直・理学研究科長が今回も登壇、マラヤ大教授の質問に答える形で、益川さんの子供の頃の思い出から学生時代、ノーベル賞につながった研究、そして若者へのアドバイスまで、知られざるエピソードも交えながら話を引き出していった。大講堂を埋めた学生たちは感激の面持ちで聞き入り、次々に質問も出た。 [[grp...

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 5月末のある日、理学部の坂田・平田ホールを高校生たちが埋めた。アジアの高校生を招いて交流する科学技術振興機構の「さくらサイエンスプラン」で来日したインド、ネパール、ブータンの高校生約90人、そして名大教育学部附属高校の1年生約120人である。アジアの高校生たちは約1週間の滞在中、ノーベル賞受賞者の講演を聴いたり、大学を訪ねたり、また日本の高校生たちと交流したり、日本文化の体験をしたりする。盛りだくさんのプログラムで、日本の科学技術への関心を高めてもらうのがねらいだ。  ホー...

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2017年04月18日

小さなカフェから

 3月末、名古屋大学では卒業式を迎え、晴れがましい笑顔があふれたが、あるカップルにとっては喜びもひとしおの一週間だったに違いない。月曜日、彼が工学博士の学位を得たのに続き、木曜日には2人の婚姻届が受理されたとの知らせが届いたからだ。彼が博士課程に進んで5年余り、そして、婚姻届を出してからなんと3年もの時間がたっていた。 時間がかかったのにはわけがある。彼はイラクからの留学生で、イラク人との国際結婚をどう扱うのか、前例がないために役所も試行錯誤、手探りで書類を整えざるを得なかっ...

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著者

辻 篤子(つじ あつこ)

1976年東京大学教養学部教養学科科学史科学哲学分科卒業。79年朝日新聞社入社、科学部、アエラ発行室、アメリカ総局などで科学を中心とした報道に携わり、2004〜13年、論説委員として科学技術や医療分野の社説を担当。11〜12年には書評委員も務めた。2016年10月から名古屋大学国際機構特任教授。

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